米、米こうじ、水のみが原料の黒酢は、人類最古の調味料である食酢(米酢)の一種です。他の食酢に比べて長期間発酵、熟成させることで酸味がまろやかに、うまみ成分が多く含まれ食べやすくなります。
黒酢とは?
食酢は食塩と並ぶ人類最古の調味料で、その起源は古く、紀元前5000年頃バビロニア(現在のイラク周辺)で酢を作っていたとの記録が残っています。
日本には4~5世紀(古墳時代)頃に、中国から酒を造る技術とともに米酢の醸造技術が伝えられ、上流階級の高級調味料や漢方薬として珍重されていました。
食酢が調味料として一般庶民に広まったのは江戸時代に入ってからで、飯に酢を混ぜて作る押し寿司やにぎり寿司が広まりました。黒酢の歴史も江戸時代後期、鹿児島県霧島市福山町から始まりました。
黒酢は米、米こうじ、水のみを入れた大きな陶器壺を屋外に並べ、6か月以上かけて発酵後、さらに6か月以上かけて同じ陶器壺で熟成をさせて作られます。
熟成を長期間行うことでまろやかな酸味や特有の香りが生まれ、琥珀色から黒褐色になります。その色が黒酢の由来です。
同一の容器で発酵から熟成までの工程を行うことは、世界的にも珍しい製造方法です。
また、黒酢の原料である米は、玄米または精米歩合が高い精白米を使用しているため、栄養価が高く含まれます。
黒酢の製造に使用する大きな陶器壺は、容量が3斗(54L)の薩摩焼が使用されています。
黒酢が製造され始めた1800年代初期(江戸時代後期)では、日常の食用壺として薩摩焼が使用されていました。このことから生活に身近なもので黒酢が作られ始めたことが分かります。
一般的な米酢にも有機酸が豊富ですが、黒酢には米酢と比較しても乳酸、アミノ酸が多く含まれます。その理由は、使用する米の量が多く(一般的な米酢の約5倍)、発酵、熟成期間が長いためと考えられています。
黒酢の効果
■疲労を回復する効果
黒酢には、酸味のもとである有機酸がたくさん含まれています。
有機酸は、エネルギー源にもなり、筋収縮を補助する物質である乳酸やクエン酸も含まれているため、運動などで疲れたときに速やかにエネルギーとなる糖質と一緒に摂ると、疲労回復に効果的です。
黒酢20~30ml(1日の量)を4~5倍に水で薄めて飲むこともできます。
長時間熟成させているのでうまみ成分が増え、さっぱりとした後味を感じられます。
■食塩の摂取量を減らせる効果
調味料として料理に使用すれば、黒酢(食酢)には塩味を引き立てる働きがあるため、料理に使う食塩の量を減らすことができます。
味加減や物事のほどあい、加減のことを「塩梅(あんばい)」という言葉で表しますが、もともと塩と梅酢を表しており、どちらか一方が多ければ、もう一方も多くして(塩辛ければ、食酢を加える。酸っぱければ、食塩を加える。)味加減を調節することから派生したと言われています。
また、酢を使うことで魚の生臭さを消したり、煮物の色合いを美しく仕上げてくれたりします。
他にも食酢の酸味が嗅覚と味覚を刺激することで食欲を増進してくれる効果があります。
■食べ物の保存性を高める効果
黒酢(食酢)の主成分である酢酸には細菌の増殖を防ぐ防腐効果があり、昔からピクルスやしめ鯖、らっきょう漬けなどの酢漬けにして食べ物を長期保存するために利用されています。
こんな方におすすめ
●疲労を回復したい
●食塩の摂取量を減らしたい
●保存食を作りたい
おさらい
●疲労回復作用がある有機酸が多く含まれる。
●黒酢(食酢)で塩味を引き立てることができる。
●細菌の増殖を防ぐ防腐効果がある。
・改訂6版 臨床栄養ディクショナリーー日本人の食事摂取基準(2020年版)対応(発行所 株式会社メディカ出版)
・食品解説付き 新ビジュアル食品成分表 新訂第二版(発行所 株式会社大飾館書店)
・広辞苑第五版 (発行所 株式会社岩波書店)
・鹿児島県HP 食文化
・鹿児島県HP ふるさと認証食品(つぼづくり米黒酢)
・乳酸とは 健康長寿ネット
・全国食酢協会中央会 全国食酢構成取引協議会
・農林水産省-食酢とはどのようなものですか
・農林水産省-登録の公示(登録番号第7号) 鹿児島の壺造り黒酢