血糖値が上がる理由と基準値
■食事をすると誰でも血糖値は上がる
血糖値は、血液中に含まれるブドウ糖(グルコース)の濃度のことです。食事中の炭水化物などが消化・吸収されてブドウ糖となり血液に入ります。このため血糖値は健康な人でも食前と食後で変化します。
血糖値が上昇すると、膵臓から分泌されるインスリンというホルモンの働きにより、ブドウ糖が体の細胞に取り込まれ、エネルギー源として利用されます。余分なブドウ糖はグリコーゲンへ変換され血糖値を下げます。グリコーゲンは肝臓や筋肉に貯えられますが、グリコーゲンが十分な量になると、余ったブドウ糖は脂肪となります。
一方、空腹になると血糖値は下がります。そうすると同じ膵臓から分泌される、グルカゴンなどのホルモンの働きにより、肝臓などに貯蔵されたグリコーゲンがブドウ糖に分解され、エネルギーとして使われることで血糖値を正常に戻します。
血糖値が必要以上に低くなることを低血糖と呼びます。
一方、血糖値が高いまま下がらない状態が続くことを高血糖と呼びます。この状態が長く続くと糖尿病など様々な病気を発症するリスクが高まるほか、血管が傷ついて動脈硬化を引き起こすことがあります。
■気になる血糖値の正常値は?
通常であれば食前の値は約70~100mg/dlの範囲と言われています。
食事をしてから2時間後に測った血糖値が140mg/dl以上ある場合は、食後高血糖と診断されます。これはインスリンの分泌が少なかったり、働きが不十分だったりすることから、食後に血糖値が急上昇しているためです。
■血糖値スパイクにも要注意
空腹時血糖値が正常な場合でも、食後の血糖値の上がり方が急激で、血糖値が140mg/dl以上に急上昇し、その後急降下する状態を「血糖値スパイク」と言います。
糖尿病になる前の症状として現れることが多いと考えられていますが、動脈硬化や心筋梗塞などの血管に関わる障害が起こるリスクを高めるとされています。空腹時血糖値を測定する健康診断では見つけにくいため、日頃から気を付ける必要があります。
血糖値対策の基本は食事と運動
血糖値対策の基本は、「食事」と「運動」です。
日本人にはやせていても血糖値が高いと言われる人がいるので、肥満気味や過体重でない人も注意が必要です。
血糖値が高くなる習慣を簡単チェック
当てはまる方は次の対策法も確認しましょう!
長続きする「ゆるい糖質制限」
血糖値は、ご飯やパン、麺類、芋、果物などに含まれる糖質(炭水化物)を摂ると上昇します。
しかし、血糖値を気にし過ぎて極端な糖質制限をしてしまうと、脳や体に必要なエネルギーが不足してしまいます。
まずは、食事の中で糖質を摂り過ぎていないか、食事量を見直してみましょう。
食べ過ぎていると感じたら、ご飯やパンをいつも食べている量から4分の1減らしてみましょう。
それも難しいなと感じたら、1~2口残すところからはじめてみてください。
いきなり減らし過ぎると我慢がストレスになり、続きにくいです。
減らした分は、野菜やきのこ、海藻などの食物繊維が含まれるおかずを増やして食べるのもおすすめです。
継続することが大事なので、まずはゆるくはじめられる方法を試してみましょう。
まずは散歩からはじめよう
運動をすることで、ブドウ糖を効率よくエネルギーとして消費しやすくなります。
運動の中でも有酸素運動がおすすめで、特にウォーキングは手軽にはじめられる運動です。
まずは、1回20分以上で週に3回以上を目標にしてみましょう。
食後の高血糖が気になる方は、食後1時間後に行うと効果的です。
普段歩いていなかったところを歩いてみると、新しい発見があるかもしれません。ウォーキングは健康維持だけでなく、精神的なリフレッシュにもなるためおすすめです。
トクホを上手に使おう
特定保健用食品(トクホ)は、科学的根拠に基づいた機能を表示した食品です。表示されている効果や安全性については国が審査を行い、食品ごとに消費者庁長官が許可しています。
「食後の血糖値の上昇をおだやかにする」などの特定の保健の目的が期待できる旨の表示がされています。
特にお茶やコーヒーなどのトクホの食品は、食事にも取り入れやすいので、普段の生活習慣を大きく変えることなくできる対策です。
おさらい
●食事をすると誰でも血糖値は上がる
●ゆるい糖質制限からはじめよう
●運動はウォーキングからはじめよう
【佐藤 順子 先生】
横浜国立大学教育学部卒業
小学校教諭を経て健康生活新聞編集に携わる
福祉住環境コーディネーター
・女子栄養大学栄養クリニックの血糖値を下げる! 毎日続けられる食べ飽きない食材&レシピ(発行所 株式会社技術評論社)
・医師もやっている血糖値の下げ方(発行所 株式会社宝島社)
・e-ヘルスネット(厚生労働省 生活習慣病予防のための健康情報サイト)
・特定保健用食品について(消費者庁)